第3回「相模半白節成」(神奈川県・平塚市)

相模半白節成

上が緑、下が白い、昭和4年に誕生の伝統野菜「相模半白節成」

30代にして「幻のきゅうり」を復活させた三代目の吉川貴博さん

肉質が締り、パリッとした食感
「河童」と呼ばれた幻のきゅうり

神奈川県・平塚市に、温室きゅうり専門農家として40年以上もの歴史と実績を誇る城島園芸の3代目の吉川貴博さんを訪ねました。現在は、「かながわブランド認定品」にも指定されている幻のきゅうり『相模半白節成(さがみはんじろふしなり)』を始め、ピクルスの瓶詰で知られる『ガーキン』、イボなしきゅうりの『フリーダ』や珍しいうぐいす色の『うぐいす』など6種類のきゅうりを温室栽培しています。

平塚市は、明治30年代から栽培が始まったきゅうりの一大産地で、現在も神奈川県では収穫量が1位といいます。その地で昭和4年に誕生した『相模半白節成』は、昭和30年代後半まで広く栽培され全国に名を馳せました。その後、病気に弱いことなどもあり、現在主流の緑色のきゅうりの台頭により一度は途絶えましたが、伝統野菜の復活に力を注いできた吉川さんの手により再び市場に出荷されるようになりました。

昔、きゅうりは木箱に入れられて出荷されましたが、市場では八百屋さんに見えるように木箱にきゅうりを立てたといわれます。木箱を川に見立て顔は出ていて日焼けしをして色が濃いが、川の中の体は日に当たらず白いという姿から「河童」と呼ばれたそうです。なお、実際は半白の性質は品種由来で、日の当たり方ではないようです。

2010年に温室栽培で取り組み始めたこのきゅうりは、半白きゅうりの代表種で果実の上半分が濃緑色、下半分が白に近い黄緑色、ずんぐりした形で黒イボがあります。肉質が締まり、バリッとした食感の皮までしっかり噛みごたえがあるので漬物に最適ですがサラダや、最近ではレトルトカレーが発売されたり、天ぷらなど加熱調理への利用も広がっているといいます。
(取材:2013年10月9日)

6種類のきゅうり

現在、きゅうりの専門農家である吉川さんの城島園芸で温室栽培されているのは、「相模半白節成」(写真の中央)を始め6種類のきゅうりです。

レトルトカレー

漬物用に使用される肉質のしっかりしたきゅうりが煮崩れせず大きなままたっぷり入っています。農商工連携のプロジェクトにより商品開発されました。

温室栽培

今では一般的な温室栽培も祖父の代に始めた1965年頃は、早く栽培して出荷できる新しい農業スタイルとしても注目されたといいます。