第1回「長岡巾着なす」(新潟県・長岡市)

長岡巾着なす

縦にシワが特徴の巾着型で大きく実った「長岡巾着なす」

小林ご夫妻

夫唱婦随で「長岡巾着なす」を生産される小林幸一さん、フサ子さんご夫妻

なすの宝庫、新潟でも際立つ
栄養たっぷりの伝統野菜

この時期、旬を迎える「なす」。新潟県長岡市でおよそ250年続いている農家の4代目の小林幸一さんは、奥さんとふたりで「長岡巾着なす」や「梨なす」、「ゆうごう」などの伝統的な『長岡野菜』を始め、きゅうりなどの路地野菜を長年栽培しています。「在来なす」の宝庫ともいわれる新潟県では、たくさんの品種のなすが栽培されていますが、中でも大型の丸なすで重量感のある「長岡巾着なす」は、最も個性的な「なす」です。

そもそも「長岡巾着なす」の歴史は、明治時代の中ごろに遡ります。現在、市内で栽培されている農家は、小林さんを含め僅か3軒になってしまいました。この「なす」ほど果肉がしっかり詰まった硬い「なす」は、全国でも珍しいと言われていますが、長岡では、伝統的に「蒸かしなす」という他の地域では珍しい甘味の強い果肉の味を最大限に引き出す「蒸かし」て生姜醤油を付けて食べるのが一般的です。

小林さんの畑に伺うとヘタと実の間に黄緑色の線が入った文字通り絞った巾着袋のように縦に皺のある「長岡巾着なす」が枝の陰から姿を現します。1本に成るのは僅かに20個程で、通常のなすの20~30%の収穫量といいます。現在、400本が栽培されていますが、原種に近いため育てるのが難しく、栽培方法も土壌改良しながら試行錯誤を繰り返し作られているそうです。全国の方に長岡にはこんなに美味しい「なす」がある、こんな食べ方、食文化があるということを伝えられればと野菜について話し出すと止まることのない小林さんは、『長岡野菜』のスポークスマンです。
(取材:2013年8月8日)

ふかし

「蒸かし」はまさに新潟ならではのなすの味わい方。蒸し上げてもへたらずに身がシャキッとしているからこそできる調理法です。生姜醤油がまたベストマッチ。

炒め物

同じく長岡特産の南蛮(とうがらし)と合わせた炒め物。ゴツゴツした外観が神楽面に似ていることから「かぐらなんばん」と呼ばれます。ピリッとした風味が夏にぴったり。

素揚げ

しっかりとして肉厚な巾着なすは、素揚げにしても存在感&満足感抜群。普通の長なすよりかなり時間をかけてじっくりと丁寧に揚げます。