第19回「京たけのこ」(京都府・長岡京市)

苦みがなく、肉厚で柔らかく
色の白いブランドたけのこ

「たけのこ」は、道元禅師が宋の時代の中国から「孟宗竹」を持ち帰り移植したのが始まりとされるなど諸説ありますが、道元禅師ゆかりの長岡京市内の寂照院には、「日本孟宗竹発祥之地」の石碑が建立されています。当初は観賞用で、食べられるようになったのは江戸時代と言われていますから二百年以上の歴史を持っています。市内では、マンホールの蓋にも「たけのこ」の絵柄が施されるなど市を挙げて“竹の街”をPRしています。

上質な『京たけのこ』の産地である長岡京を含む乙訓地域は、西山連峰のおかげで北西の季節風が弱められ、孟宗竹の根元が揺れず根の痛みが少ないほか、畑が傾斜地のため水はけが良く、粘り気が強く密度の高い粘土質の土が孟宗竹に適しているという環境にあります。さらに、この地では秋にたけのこ畑一面に稲わらを敷き、冬に置土をするなど栽培方法に工夫がされて育てられていることから柔らかいたけのこが生まれるといいます。

府内で生産されるたけのこは全国の1割程ですが、品質は、「京の伝統野菜」にも認定されている極上品です。今回、訪ねた小野洋史さんは、代々たけのこが生産される藪を継いで20年になりますが、現在は4000㎡に1200本の竹を育てています。竹藪は、草取りや余分な竹の伐採、稲わらを敷き詰めて赤土を入れるなど1年を通じて手入れが欠かせないほか、お互いの成長を妨げないように竹と竹の間を少し空けて日当たりを確保しています。

1年を通じ手をかけて育てられる『京たけのこ』ですが、「たけのこご飯」を始め、「わかたけ煮」や「わかたけの酢のもの」などといった定番の料理もさることながら、地元では豊かな風味とともにほのかな甘みが味わえる採れたての生の「刺身」や「すき焼き」の具として食べられることも多いようです。また、野菜と同じような栄養があるたけのこは、穂先の柔らかい部位から根元の硬い部位までさまざまな食べ方や調理にも応えることができます。
(取材:2015年4月24日)

京たけのこ

えぐみや苦みが少なく、肉厚で柔らかく、風味とともにほのかな甘みが口の中に広がるたけのこです。

小野洋史さん

手間と時間をかけ、ひとりで丹精を込めて極上のたけのこを育てている小野農園の小野洋史さん。

竹林

竹林は、稲わらを敷き詰めたり、土を入れるなど手入れが行き届き、足が沈むほどの柔らかさです。

「竹の子姿寿司

地元の和食店で人気のある名物「竹の子姿寿司」は、小野農園のたけのこを使ったオリジナル品です。

掘り鍬

たけのこを掘り出すのに用いる「掘り鍬」は、柄は短く、金具が長く、先端は鋭利になっている特注品です。