第9回「ファーストトマト」(愛知県・豊明市)

ファーストトマト

おしりがピンと尖った姿が特徴の『ファーストトマト』。酸味と甘みのバランスが良く、もっちりとした昔懐かしいトマトです。

長男の横山専務

アメリカに農業留学されていた経験もある長男の横山専務は、日本ばかりでなく、広大なアメリカでの農業という夢も持たれています。

もっちり食感の昔懐かしい
ハート型のトマト

愛知県は、古くから本格的なトマト栽培が行われてきた日本有数のトマト産地です。明治時代から海外品種が導入されて各地の試験場などで品種改良が試みられ、昭和初期に豊橋温室園芸農協で開発されたのが『ファーストトマト』です。『ファーストトマト』は、酸味とトマト臭さが少ないことから生食用として広く普及しましたが、昭和60年に発売された「桃太郎」に市場が占有されたこともあり、生産は減少しています。

今回、『ファーストトマト』の品種改良したものを生産されている豊明市の横山農園に横山専務を訪ねました。祖父の代に農業を始め、1970年に父親が施設トマトの栽培を始めたといいます。当初は県内の第一人者に教えを受けたり、失敗を繰り返しながら苦労されてトマト栽培を続けてこられました。自信の持てるトマトが生産できるようになり、1989年には市場出荷から直売へと切り替え、1990年からはジュースやジャムなどの加工品事業もスタートされました。

現在、同農園では12棟の温室を所有し、『ファーストトマト』のほか、『ミニトマト』や『トマトボーノ』、『マスクメロン』を生産しているほか、農園近くの直売所や長久手市で弟さんがシェフを務めるイタリアンレストランと直売所も展開されています。生産から加工、販売までを一貫して手掛けることで6次産業化法の総合化事業計画の認定も受けています。また、1999年には「経営状態の良好さ」から「第29回農業大賞」と「第39回農林水産大臣賞」も受賞されています。

おしりがピンと尖った姿が特徴の品種改良された『ファーストトマト』を生産されている生産者さんは、豊明市内では僅か1軒です。酸味と甘みのバランスが良く、もっちりした食感の昔懐かしいトマトで、包丁で切ると断面は、ハート型になります。直売所だけの販売で1万2000人にも及ぶ顧客がいるといいますが、その人気の要因である品質を支えるのは、栽培の際に水分コントロールを自由に行える隔離ベッドや良質のバーク堆肥などにあるようです。

長久手市にある直営のイタリアンレストランでもさまざまなトマト料理が提供されていますが、横山さんは、「生で食べるのが一番」といいます。常温で置くと追熟し酸味が和らぎ、甘さが増してより一層美味しく食べることができるようです。
(取材:2014年4月15日)

ジャム

横山農園で作られた完熟「ファーストトマト」のジャム。トマトの魅力たっぷりの甘酸っぱい味わいは子どもにも大人にも人気です。

オリーブ漬け

パスタやサンドウィッチなどにも合うドライトマトですが、ファーストトマトを半日天日干した後、白ワインビネガーなどで3日寝かせたオリーブ漬け。

タコライス

ご飯の上に炒めたタマネギや牛挽肉などを乗せ、さらに角切りにしたファーストトマト、チーズ、レタスを盛ったタコライス。