肉質が軟らかく肌がきれいな栄養価の高い源助だいこん
ずんぐりとした円筒形の『源助だいこん』は、肉質が軟らかく肌がきれいな大根として高い評価を受けています。
石川県内では、主にスイカを栽培した跡地に作付けされ、10月頃に収穫が始まる「青首大根」と呼ばれる大根が通常よく出回っている種類ですが、石川県オリジナルの大根で冬の食材として親しまれているのが、「加賀野菜」にも認定されている『源助だいこん』です。昭和7年から10年をかけて17年に完成されたといわれますが、10月下旬から収穫が始まり、11月上旬にピークを迎えた後、年を越えて2月上旬まで出荷は続きます。
今回、訪れた石川県金沢市の打木町は、『打木赤皮甘栗かぼちゃ』と並んで『源助だいこん』の産地として知られています。一時、収量性に優れ作りやすい「青首総太大根」の出現により作付面積が減少し、僅か1軒にまでなってしまった『源助だいこん』ですが、現在では市内で18軒の農家が生産に取り組んでいます。厳しい時代に最後の1軒として『源助だいこん』を守り続けたのが、「打木源助だいこん部」の部長を務める松本充明さんの実家でした。
『源助だいこん』を開発した松本佐一郎さんを祖父に持ち、現在は、「打木源助だいこん部」の部長を務める松本充明さん。
『源助だいこん』は、在来の「青首大根」と愛知県から持ち込まれた「白首大根」が自然交雑したものから打木町の農家の松本佐一郎さんによって育成されたものといわれます。その際にアドバイザーを務めたのが、当時盛んに栽培されていた「宮重大根」の生産者の井上源助さんでした。『源助だいこん』は、この源助さんの名前に由来しています。また、松本佐一郎さんは、松本充明さんの祖父にあたる方で、ノウハウは孫の充明さんへと受け継がれています。
ずんぐりとした円筒形で、尻のつまりがよい『源助だいこん』は、肉質が軟らかく煮崩れしにくいため、「ふろふき大根」や「ブリ大根」などの煮物に最適であるほか、金沢名物の「おでん」にも欠かせない食材です。また、繊維質が少なく甘みがあるため、「大根おろし」や「一夜漬け」、「浅漬」にも合うといいます。美味しく食べられるよう鮮度を重視するため収穫は早朝から行われ、畑から抜いた大根を冷水で洗い、箱詰めまでの作業は全て人の手で行われます。
(取材:2014年10月16日)
2万本近くの『源助だいこん』が植えられた大根畑。大根の成長や出来を見極める基準は、葉っぱの色といいます。
繊維質が少なく、甘みがあるため、「肉団子みぞれスープ」には、『源助だいこん』の「おろし」がとても合います。
『源助だいこん』は、実がパンパンに張った一番良い状態で出荷するといいますが、抜く時も作業は丁寧に行われます。