第17回「葉ごぼう」(香川県・高松市)

独特の爽やかな香りと歯触り
根から茎に葉も食べられる

『葉ごぼう』は、“春を呼ぶ野菜”と呼ばれ、古くから香川県の食卓では親しまれてきた「ふるさと野菜」ですが、その昔、中国から渡来し、平安時代には薬用として利用されていたといいます。現在ではピーク時より生産量は減産しているものの、10種類ほどの伝統野菜とともに地元では、「讃岐野菜」としてブランド化する動きもあります。食文化の変化で消費量が減少したり、生産者が高齢化しているという背景がありますが、認知度を高め、新たな地域資源として観光振興にも生かそうという取組みです。

『葉ごぼう』には、福井県の「越前白茎ゴボウ」や大阪府の「若ゴボウ」もありますが、その地域での流通量、栽培エリアや食文化としての日常性から総合的に考察すると香川県のものが追随を許さないといいます。葉はとても柔らかく、しなやかで細かい葉脈が隅々まで広がり、ひだが大きい『葉ごぼう』ですが、特に香川県産は、根も茎も繊維質が柔らかいといわれています。冬のうちに養分を蓄えることで、春の収穫時には繊維が柔らかくなり、味の良い葉ごぼうに育ちます。

今回、訪ねた『葉ごぼう』の生産者の吉田清志さんは、現在おひとりで露地栽培とハウス栽培で生産されています。9月下旬から種をまき、その後、新しい芽が出て育った2月上旬から4月上旬にかけて収穫されます。ハウスで栽培すると路地より生育も早く、その分収穫することが可能になります。土の中に根がしっかり張っているので、抜くのに手間がかかったり、傷つけないよう細心の注意を払いながら収穫されます。全て手作業で行われるため、ひとりではかなりの重労働になるといいます。

「ごぼう」といえば、茶色く細長い根のものが一般的ですが、『葉ごぼう』は、短い根に長い茎と大きな葉がついています。成長すると1m近くの大きさに育つキク科の2年草です。独特の爽やかな香りと特有のシャキシャキとした歯触りが特徴で、根と茎、少し苦みのある葉も食べることができる美味しい野菜です。食物繊維が多く、鉄分やカルシウムも含まれています。地元では、「天ぷら」や茎を短冊切りにして油揚げやシイタケと一緒に炒めた「煮物」、また、「ごまあえ」などにして食べられることが多いようです。
(取材:2015年2月20日)

葉ごぼう

普通の茶色で細長いごぼうと違い、短い根に長い茎と大きな葉がついている『葉ごぼう』。

吉田清志さん

『葉ごぼう』の増産に向け、来年はハウスを2棟増やす計画という生産者の吉田清志さん。

葉ごぼうハウス栽培

露地栽培に比べ生育も早く、天候にさほど左右されず早く収穫できるというハウス栽培。

葉ごぼうの天ぷら

地元では一般的な『葉ごぼう』の天ぷら。葉の部分は多少苦みがあるので、二度揚げにします。

葉ごぼう洗い

収穫された『葉ごぼう』は、集荷場に置かれた大きな樽の45度の熱湯で洗われます。