第8回「紀州うすい」(和歌山県・みなべ町)

うすいえんどう

さやをむいて中の大きな実を食べるえんどうの代表的な品種が『うすいえんどう』。

玉井清さん

紀州水道に面した高台の土地で、奥様とふたりで『うすいえんどう』の生産に従事する玉井清さん。

記念日(5月4日)も制定された
ホクホクとした甘みのえんどう

明治時代にアメリカから渡来し、大阪府羽曳野市碓井地区で栽培されたのが始まりといわれる伝統野菜『うすいえんどう』。大阪から隣接する和歌山へと移り、温暖な県南地区で栽培されてきました。現在は、日本一の産地というみなべ町と印南市を中心に生産され、市場には「紀州うすい」として地域団体商標を取得し出荷されています。また、5月4日に「うすいえんどうの日」という記念日も制定され、PRにも余念がありません。

現在、みなべ町で『うすいえんどう』を栽培している農家は、およそ600戸もあるといいます。今回訪ねたのは、紀州水道に面した高台のホテルの裏に広がる土地で生産をする玉井清さん。2代目の生産者ですが、以前は会社勤めをしていたために『うすいえんどう』の栽培に専業として取り組まれて僅か3年ほど。それまでは、奥様とお母様が担い手となっていました。町は梅の名産地でもありますが、玉井さんも6月からは「梅」の栽培に従事されています。

みなべ町では、11月から5月にかけて露地栽培、ハウス栽培、露地栽培の順で生産されますが、『うすいえんどう』は連作を嫌うため3~5年の間は同じ場所に栽培しないようにしているといいます。玉井さんは露地栽培のみですが、秋口に種を撒き、間引き、支柱を立て、整枝をした上でふっくらと大きく育った実の収穫へとなります。海に面していることから強風や防寒、また海鳥やアライグマなどから実を守るための防御ネットなどの対策も欠かせない仕事です。

『うすいえんどう』は、さわやかな緑色のさやに大きな粒のえんどう豆です。皮が薄く甘みがあり、グリーンピースとはひと味違うホクホクとした食感が特徴です。京阪神への出荷が殆どで、残りは地元での消費となります。地元では、「豆ごはん」や「卵とじ」などで食べられますが、豆をすりつぶしてポタージュスープとしても美味しく食べられるようです。また、若草色が映えるために料理の彩りとして添えられます。
(取材:2014年3月19日)

収穫

さやの中の粒がもう少し大きくなって、爽やかな緑色になるころに収穫を迎えます。

豆ご飯

昆布だしと塩と酒で炊き上げたご飯に塩ゆでした『うすいえんどう』を混ぜた地元での定番「豆ご飯」。

みなべいなみの豆

和歌山県は日本一の『うすいえんどう』の産地ですが、みなべ町と印南市を中心に生産されています。