鮮やかな赤色の肩部が角ばっていて長い『山内にんじん』は、肉質が緻密で煮崩れしにくいため煮物や鍋物に最適といわれます。
『山内にんじん』や『青首大根』、また「いぶりがっこ」をご家族で生産されているほか、三又営農生産組合の事務局長も務める高橋登さん。
パリッとした食感と強い甘みが
特徴の太くて長いにんじん
現在、秋田県の伝統野菜として認定されているものは30品目あります。認定の条件としては、昭和30年代以前から県内で栽培されていたもの、地名や人名が付いているなど県に由来しているもの、種子や苗が残されており、生産物が手に入るものとされています。その中で唯一の「にんじん」である『山内にんじん』は、山間地の豪雪地帯としても知られている横手市の山内地域の三又で、およそ60戸ほどの生産者さんによって生産されている「にんじん」で、10月下旬から11月下旬にかけて出荷されています。
そもそも昭和20年代前半に『札幌太』から選抜された優良品種が、『山内にんじん』と命名されたのが始まりで、とう立ちが少なく、寒さに強いため栽培が容易なことから盛んに作られました。しかし、昭和50年以降は小ぶりで栽培し易い「短根系にんじん」の台頭により衰退し、僅かに自家用栽培を残すだけとなってしまいましたが、平成17年に県の伝統野菜に認定され、地域の伝統資源を守ろうと『山内にんじん』復活のための活動がスタートし、平成19年から三又営農生産組合を中心に地域での本格栽培が始まりました。
今回、訪ねた三又営農生産組合の事務局長を務める高橋登さんは、お母様や奥様などご家族を中心に「青首大根」と『山内にんじん』を無農薬で育てられているほか、昔から冬場の保存食として当地の名産でもある漬物「いぶりがっこ(いぶり大根とにんじん)」も作られています。名人と呼ばれるお母様と「第1回山内いぶりんピック」で金賞を受賞された奥様が、例年この時期から12月中旬にかけて漬け込まれているもので、ネット通販でも販売されています。
昼夜の寒暖の差が大きい山間地の畑で育てられているので寒さに強く、鮮やかな赤色で、肩部が角ばっていて30cmと長くて太い『山内にんじん』は、肉質が緻密で煮崩れしにくいため煮物や鍋物に最適といわれます。また、パリッとした食感に香りや強い甘みが特徴で、漬物やサラダなど生の風味の料理に向いているといいます。ちなみに、地元では好んで味噌漬の一夜漬けが食べられます。栽培する農家が増える中、量販店や小売店、道の駅などにも販路を広げて生産が拡大しているといいます。
(取材:2014年11月10日)
昼夜の寒暖の差が大きい山間地の畑で、手間をかけて無農薬で栽培されているからこそ濃厚な『山内にんじん』が収穫されます。
生のままでもおいしいくいただけるよう千切りにした『山内にんじん』は、色が濃くて甘みも強いため、麹の「白和え」にも合います。
「いぶりがっこ」は1本1本縄で編み込まれたにんじんを束ね、いぶり小屋で4~5日じっくりと燻された後、秘伝の製法で漬け込まれます。