球根から育つねぎと分球たまねぎとの雑種で、緑黄色野菜のひとつ。日本を代表する青ねぎとして知られます。
因島の重井地区で生産に従事する村上豊さんは五代目。『わけぎ』の魅力を体験授業で子どもたちに伝えています。
日本一の生産量を誇る独特の
香りと甘みが特徴の緑黄色野菜
中国からの渡来が1500年前ともいわれる伝統野菜の『わけぎ』。ユリ科の多年草で、産地の形態を整えたのは明治37年ごろに遡り、当初は三原市の特産物として栽培されていました。尾道市では40年ごろから始まりましたが、現在では県内有数の産地となり、吉和、岩子島、因島を中心に生産され、市場には『広島わけぎ』として出荷されています。
現在、因島で『広島わけぎ』を栽培している農家は23戸。今回訪ねたのは、島の北部にある主要生産地の重井地区の村上豊さん。5代目の生産者ですが、『わけぎ』の栽培に取り組まれて14年ほど。「わけぎ」は、1年を通じて栽培ができますが、特に11月~4月の出荷量が多く、6月~8月の夏場にかけては少なくなるので、閑散期には「児玉すいか」の生産にも従事されています。
ねぎは種子から育てますが、『わけぎ』は球根から育てられ、1~2ヵ月で収穫できるまでに成長します。そのため、畑では年に10回前後植えられます。『わけぎ』という名前は、この株分けにより短期間で増えることから付けられたといいます。独特の香りと甘みが特徴の緑黄色野菜で、現在、季節に応じ9品種が栽培されています。サイズは」M、L、2Lと3種類あります。
京阪神への出荷が多く6割、中京圏が3割、残りは地元での消費となり、首都圏への流通は殆どないといいます。一般的には、「ぬた」で食べられますが、湯がいてシーチキンとのサラダや牛肉のタタキを食べる際に、風味を生かして薬味としても使われます。また、ご当地グルメのお好み焼きやチジミにも合うといいます。加熱すると特に甘みが増すようです。
地元では、「食農体験事業」として、小学5年生の児童を対象に、村上さんの畑を使い、栽培から収穫、わけぎを使った調理実習まで行われています。当初は、土壌や水や肥料など慣れない『わけぎ』の栽培に苦労したといいますが、今では自ら育てた『わけぎ』に自信とプライドを持っています。そんな地域を代表する農産物の魅力を子どもたちに伝える活動に喜びを感じています。
(取材:2014年2月17日)
1~2ヵ月で収穫できるため、年に10回前後植えられています。尾道市が生産量、出荷量とも全国一です。
鶏もも肉やにんじん、ごぼう、しいたけなどの野菜との「鶏の炊き込みご飯」では、わけぎの香りや味がアクセントになります。
大多数が関西圏や中京圏の市場を中心に出荷されていますが、その際には『広島わけぎ』として出荷されています。