第6回「大和まな」(奈良県・宇陀市)

大和まな

濃緑色で、葉の切れ込みが小松菜より大きく入った野性的な外観が特徴の『大和まな』のルーツは、中国から渡来した漬け菜。

吉岡さん

『大和まな』の知名度と産地としての存在感を高めたいと話す「大和高原大和まな部会」の部会長を務める吉岡秀義さん。

最も古い野菜のひとつ
柔らかく、甘みに富んだ漬け菜

奈良・大和路の食の歴史、地域の伝統をしっかりと受け継ぎ、戦前から栽培されてきた県認定の「大和の伝統野菜」は現在18品目ありますが、漬け菜の一種である『大和まな』は、かつては油とり用としても栽培されていたといわれます。ルーツは中国から渡来した漬け菜で、『古事記』に「菘」と記載されているように、わが国の中で最も古い野菜のひとつです。その存在は、「大和の伝統野菜」として認定されている18品目の中でも際立っています。晩秋から冬にかけてが旬の野菜で、冬場の貴重な青菜として食卓に彩りを添えています。

宇陀市や大和高田市を中心に生産されていますが、今回訪ねたのは、『大和まな』を生産する34名の農家(現在は39名)の方により設立されたJAならけんの農産物生産・流通部会の「大和高原大和まな部会」の部会長を務める吉岡秀義さん。今後、生産者を増やすとともに、生産者を組織化することで出荷量を増やし、『大和まな』の知名度と産地としての存在感を高めていきたいといいます。10年前に他の仕事を辞めて農業に従事する吉岡さんご自身は、奥さまとふたりで、ほうれん草やこんにゃくなども生産されています。

収穫が冬季の一時期に限られ、他の野菜のように周年栽培が難しいために、大規模な流通に乗ることなく農家の自給野菜として利用されてきましたが、近年、種が選抜されて通年栽培が可能になりました。また、「大和まな」は、収穫後、葉が黄変しやすく、店頭での日持ちの悪さが生産拡大の課題となっていましたが、平成21年に産学官の連携により黄化しにくい新品種「夏なら菜」と「冬なら菜」の2種が開発されました。こうした種子の供給体制や予冷庫の設置が整ったことから部会の設立に至ったといわれます。

『大和まな』は濃緑色で、小松菜に大根葉のような切れ込みが入った野性的な外観が特徴でもあります。晩秋から冬にかけての大和の地方色豊かな惣菜として、漬物を始めおひたしや煮物、油炒めに辛子和えなどに調理されますが、特に油揚げとの相性が良く、煮浸しは地元の家庭料理として定番のようです。噛んだ瞬間に旨みが口の中に広がりますが、12月以降、寒さが厳しくなる中、霜に当たると、他の漬け菜にはない柔らかさと独特の風味や甘みが一層増すといわれます。
(取材:2014年1月15日)

収穫

霜に当たった12月以降が最も味が良くなると言われ、他の漬け菜よりも柔らかく、独特の風味や甘みが一層増します。

おひたし

晩秋から冬にかけての大和の地方色豊かな惣菜として、特に油揚げとの相性が良く、おひたしは地元の家庭料理として定番。

栽培

害虫が付きやすいので、ハウスの内側にもネットでカバーするなど防除管理も徹底を図っています。