第18回「泉州水なす」(大阪府・貝塚市)

皮が軟らかく、甘みがあり
みずみずしい食感の水なす

泉州地域の特産品として知られている『泉州水なす』ですが、室町時代に書かれた『庭訓往来』には、澤茄子に「みつなす」の読みがふられており、和泉国日根郡澤村(現・貝塚市澤)が「水なす」発祥の地と伝えられています。貝塚市では、昭和33年に中出農園の創業者が初めて栽培を始めましたが、難しいと言われる「水なす」栽培にあって、本来の美味しい「水なす」ができる栄養豊富な砂地ベースの土壌で栽培されてきました。

昔は農作業中にこの「水なす」で喉を潤したという言い伝えも残されている『泉州水なす』は、搾ると水がしたたるほど水分を多く含んでいるみずみずしいなすで、皮が薄く、アクが少ない上に果肉にはほのかな甘みがあるのが特徴です。大阪が全国に誇るこの「水なす」は、元々は淡い赤紫色がかった巾着型をしていましたが、改良が重ねられ、現在のような美しい紺色や群青色に、そして一般的ななすに比べ丸みを帯びた形に変わりました。

今回、訪ねた中出農園は、二代目が農園の基盤を作り、現在は引き継いだ三代目の兄・庸介さんが「水なす」の栽培、弟・達也さんが「水なす漬け」と兄弟で取り組まれていますが、3月から9月の旬の時期には家族総出で休みなく作業されるといいます。現在はビニールハウスで栽培されていますが、天候や状況に応じて温度と水分の管理、調整が図られているほか、味を左右する土壌のバランスが崩れないよう肥料の調合も徹底されています。

「ゆでなす」や「マーボーなす」といったなすを使った定番や「肉巻き」に「なすと大豆の炊き込みご飯」といった料理もさることながら、「水なす」本来の甘みを最大限に生かすため、浅く糠漬けした「水なす漬」は、作り立てのぬか床を使うことで酸味と嫌な臭いをなくし、旨みとまろやかさがある、まるでフルーツのような漬物です。平成に入ったころから知名度が上がり、今ではなすが苦手な人や女性にも大人気といいます。
(取材:2015年3月24日)

泉州水なす

皮が薄く、アクが少ない上にほのかな甘みがある水分をたっぷりと含んだみずみずしい卵型のなす。

中出庸介さん

10年程前に三代目を継いだお兄さんの庸介さんが『泉州水なす』の栽培に取り組まれています。

弟の達也さん

弟の達也さんは、美味しく食べられるように素朴な味に仕上げた「水なす漬」を作られています。

水なす漬

浅く糠漬けした「水なす漬」は、酸味と嫌な臭いをなくし、旨みとまろやかさがあるフルーツのような漬物。

ビニールハウス

中出農園の「水なす」は徹底した温度・水分管理により全てビニールハウスで育てられています。